20時間旅行のこと


数日前にウワーッとなって、電車で30分のところに旅行にいくことにした。

名古屋駅から名鉄に乗って、中部国際空港セントレアにいく。目的地は日帰りでも全く問題ない、『フライト・オブ・ドリームズ』である。
これはボーイング787ドリームライナー(飛行機)の実機がごく近くで拝めるのに加え、チームラボプロデュースのプロジェクションマッピングや楽しいアクティビティがあり、かつ、ボーイング誕生の地であるシアトル*1をイメージした飲食エリアを併設した施設として、2018年に華華しくオープンした。場所はセントレアのメインターミナルから直結で、徒歩7分くらいの距離。
大々的にスタートした愛知県内の新施設、へ〜行ってみたいな〜行かなきゃな〜、と思っているうちに、すぐ2年経ってしまった。そしてコロナが来て、その存在すら忘れかけた頃、ついにこんなニュースが入ってきた。

要は立ち行かないので3月末で一旦閉めますということだ。
忘れてた忘れてた、閉まる前に一度行かなくちゃ、と決意してから1ヶ月。休みの前日には「明日は…起きたら…フライトオブドリームズに行こう…うん…」と思うのだが、当日は睡眠を満喫するのに忙しくて、たった30分の電車旅でさえ億劫になり、行かないままになっていた。
そこで、じゃぁ、もう、泊まったらいいんじゃないか、というわけだ。仕事から家に帰らずそのまま空港に向かって、近くに泊まる。翌朝、起きて、遊びに行く。夕方帰ってきて、翌日は普通に家から会社に行く。これだ。なんでもいいから旅行したい気持ちと相まって、即行動した。

 

奮発して予約したホテル『Four Points by Sheraton』のレストランは、いまの時期は20時までの営業だという。定時である18時に会社を出れば、ぎりぎり滑り込める。やったるぞ頑張るぞ…と、「わたしは今日早く帰るんだ」とチームメンバーに宣言してみたりしたものの、なんだかんだで*2結局20時に会社を出た。うん、わかってたけど全然むりだった。会社に行く日にレストランでディナーとか夢のまた夢だった。
デパ地下ももうやってない。悔し紛れに40%オフの惣菜をディーンアンドデルーカでえいやと買って、コンビニでビールを得て電車に乗る。一人席に座れたので、コソコソ隠れてビール*3を飲む。
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ホテルはスタッフがギンガムチェックのシャツを着て迎えてくれるカジュアルな空間だった。飛行機をテーマにしたインダストリアルなインテリアがとてもかわいい。部屋も同様で満足だ。テレビの中華チャンネルを流して旅行気分を高める。パックに入ったケールのサラダなんかを食べて悦に入り、広いお風呂に入って広いベッドで寝る。
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朝、「ああ、朝食つけたけど何時までなんだろう…」と寝たり起きたりしていたら10時になっており、食事の機会は消えた。Don't Disturbのサインを付けているのに部屋に人が入ってきてしまう夢を見ている場合じゃなかった。*4バカである。


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気を取り直してフライト・オブ・ドリームズへ。
787ドリームライナーが、どどーんと建物の中に入れてあってかっこいい。マリナーズのネオンもスタバと共に光っていて、シアトル感を出している。
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大学の頃にシアトルに短期間滞在したことがあるので、このムードに少しきゅんとくる。エヴァレットにあるこの787を作っている工場の見学に行ったのも、忘れられない思い出だ。とにかくめちゃくちゃ広くてずーーーっと続く通路を歩きまくった記憶。あそこで作った飛行機が、いまここにあるんだなぁという不思議な感慨。
この787はホントの初号機で、テスト機として工場から飛び立って、何年もテスト飛行したあとに、この愛知の空港に納められたらしい。なぜここへという感もあるけど、アツい。
実機に入ってコックピットを間近に見たり、チームラボあるある(失礼)な色塗りした飛行機がCGになって動くやつで遊んだり、一人で楽しんだが、あまり人気のなさそうだった飛行機工場の様子を映したものがわたしは一番面白かった。
飛行機の各パーツが全世界のメーカーでバラバラに製造されていることを示す絵は感動的。SUBARUの工場で作られた巨大な羽のパーツを、さらに巨大な飛行機の中に1つだけ入れて飛び立つ姿はたまらないものがあった。もっとこのコーナーを推せばいいのに…と思うけど、まぁフライトシュミレーター*5とかのほうが人気があるのはわかる。
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1時間に3回くらい、建物の中全体を暗くして、音楽と共にプロジェクションマッピングを見せるようになっているのだけど、飛行機に投影するわけではなくて床と壁に投影するのが主だとわかってちょっとがっかりした。
飛行機の機体はツルツルしているし丸いから、なにかを映すこと自体に向かないんだろうけど、チームラボあるある(失礼だってば)の花とか灯籠とかが流れている時間は完全に「はて…」となってしまった。逆に、実機が夜の街の上を飛んでいるように見せるシーンは素敵に感じて、プロジェクションマッピングって、対象物と組合せる理由がないとちょっと難しい技術なのかもな…と思った。*6

シアトルの街並みイメージコーナーはお店が半分以上休業していて少し寂しい状態。半額セールのマックアンドチーズに、サラダとビールをつけて豪勢に食べた。帰り道のボーイングお土産ストアもサンキューセール中。少ししか買わなかったけど、本当にみなさまお疲れさまです…の気持ちで去った。
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帰りついでにセントレアのメインターミナルにも寄った。
ちらほら乗客らしき方々はいる、部活の大会に行くのか帰るのかのような特殊な荷物を持った学生の集団が多い。けれど、混雑はない。出国前エリアのレストランや雑貨店は1/3くらいがシャッターを降ろしている。そのうち1/3は休業ではなく"閉店"の表示で、ゾッとする。もうこの、ほとんどの人が飛行機に乗らない状態が1年以上も続いてしまったんだもんね。このインパクトの大きさを、今更になってやっと、ちゃんと認識できた気がする。休業している店もいつまで休みにしておけるのか…閉店になったお店に勤めていた人たちはどうなったのか…胸が苦しい。
「明日で閉店します」と書かれたカフェ・ド・クリエでコーヒー休憩して、電車に乗って帰ってきた。およそ20時間ほどの旅でした。

 

 

 

*1:かつては本社もあったが2001年にシカゴに移転。工場は残っている。

*2:ありがたいことだなと思うんだけど、ほんと定時以降にスタートする会話が多すぎる…

*3:振り返るとこれは第3のビールであった、よってビールではない…

*4:そしてその弁償の代わりに今日中に自分の手荷物を自宅へ送ってくれと頼む、リアリティある夢だった。

*5:別料金、予約制。参加せず。

*6:ここの文句を書きたくてブログを書いたようなものですゴメンナサイ…