眉毛のこと

先月、長らくの友人の結婚式があったので、ちょっと自分の見た目のことを考えないといけないなと思った。写真に写って、それが友人の一生の思い出に残るだろうから、あまりにもぐだぐだで行くのはよくない。
とはいえ痩せるとかなんとかは今さら無理なので、とりあえずまつげパーマをあててやる気を出すことにした。ついでにメニューにあった『眉カットと描き方講座』をセットにして予約した。

おかげさまでまつげはバッチリ上がり、眉は…
眉毛は…
ガッツリ刈られた。

ここ半年か1年くらい、「もしかしてフサフサの眉毛が流行ってませんか」と勝手に思って、かなりボサボサに眉毛を生やして、描くこともせずに日常(=出社)を過ごしていた。そんなわたしの立派な眉毛はちょっと目を瞑っている間にバッサリと刈られほぼ半減してしまった。
ショックだった。
先に「こういう形の眉毛がよさそうですね」と合意は確かにしたけれど、ここまで細くしますとはあなた仰らなかったわよ、と恨みがましい目を施術者に向けてしまうが、彼女は私の気持ちなぞ露知らず。
「いらないところはみんな剃りましたので、足らないところを描いていきますねー。私が半分描くので、もう半分はお客様で…」と作業を進めていく。いらないところって!眼鏡は顔の一部です、みたいな気持ちで、そこも眉の一部でしたが…!?と心の中で大声を出す。
私は半分心ここにあらずになって、ろくに描き方も聞かず、ただ、眉毛に3種類も4種類も化粧品を使うなんてすごいなぁと思った。眉マスカラというのは髪色が明るい人が使うものであって、私には関係ないものだと思っていたが、めちゃくちゃマスカラされて、心のへぇボタンを2度押した。帰り道にドラッグストアで眉マスカラを買ったけど、その翌日ともう一回くらいしか使わなかった。私はどうも鈍感で、眉マスカラの効果がなんなのか、微細な変化を自分の顔を見てもわからないのだった。

果たして、もう眉毛を描くしかない状況に追い込まれた私の顔面。眉毛がどうも細すぎる気がして数日間はがっかりし続けていたのだが、仕方なく、教えてくれた人の言っていたよりも太めに描く。すると、なんだかつまらないけど、描いたほうがいいな、となるのだった。ONの顔になる。布団からどろどろと抜け出た沼のような顔のまま出勤していたのとは、やはり少し変わる。顔の中に線があるだけでこんなにも、と驚く。
長らくサボっていた、"朝の洗面台の前で自分の顔をよく見る"という苦手な作業を果たして続けられるかと不安だったけれど、およそ1ヶ月、無い袖は振れず背に腹は代えらず、無い眉毛のために描き続けることができている。さらに眉毛まで描くとなんとなく目にもなんか塗りましょうかという気分になってくるからすごいものだ。ちょこっとでも手を動かせばその後の作業がどんどんできるというよくある"やる気を出す方法"を地で行っている。

一方で、刈った毛はだんだんと生えてもくるわけで、今後の眉方針をまた迷い始めている。あの施術者の人が言ったとおりに、"いらないところ"は剃るべきだろう。しかしもう、どのくらいの範囲が"いらないところ"だったのか私は覚えていないのだった。