レンジとオーブンのこと

 

電子レンジが壊れてからもうすぐ2ヶ月経つ。

買うのも捨てるのも面倒くさくて、壊れたレンジは冷蔵庫の上にそのままになっており、現在は手ぬぐい掛けとしての役割のみに甘んじている。

そんなレンジなし生活、やってみたけどとっても快適なんですよ〜〜!なんてことがあるわけもなく、普通に不便である。
これからの季節、豆腐をレンジでチンしてポン酢をかけて食べるという料理とは言えないなにかを夜ご飯に食べるのが楽しみなのに。湯豆腐を準備するのの30倍楽で、0.8倍くらい美味しいのに。
それに、レンジで使える蒸し器を買って以来、ほぼすべての食事をそれで作ってきたのが、まさに無用の長物になっている。プラスチックの空間だけが食器棚の中でしょんぼりと幅をとっている。かつての活躍ぶりからすると大変にかわいそうな存在感だ。
そんな中復権を果たしつつあるのがオーブンで、最近のお弁当製造業務はオーブンが一手に担っている。やっていることは野菜とタンパク質を天板に並べて、調味料と油をかけて焼く、以上。*1 多少気を遣う場合は野菜だけを先に焼いて、タンパク質を追っかけで天板に乗せて焼く。肉や魚は野菜を焼いている間に下味をつける等するとスマートな感じがある。いざオーブンに入れる頃には野菜がふにゃふにゃになっているので空間が作りやすく、なんとなく合理的に見える。焼き時間は計20分ほど。
レンジ蒸しもそうだけど、放置できる料理が助かる。まるごと焼いたピーマンを会社のレンジでチンして食べると、中からジュワと水分が溢れて美味しい。
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ところで最近配信が始まったNetflixのEASY BAKE BATTLEを観ている。
前半は挑戦者3名がテーマに沿って30分ほどの短い時間で料理対決をして、後半は前半の勝者2名が備え付けのオーブンだけを使って料理を作る、という流れ。しかもオーブンは決まった時間の間にしか火がつかない。家庭料理の達人が簡単で手早く美味しいメニューで競い合う。  
オーブンだけを使いますというのでいかにもアメリカらしい料理番組だなと思いつつ、なにか最近の生活にヒントもありそうな気がして見ているのだが、このオーブンの温度が何度なのかわからないし、オーブンだけと言いつつフライヤーを使ってもレンジを使ってもルール違反ではなさそうだし、早く!簡単に!と呼びかけながらも、その辺の加点があんまりなさそうだしと不満もある。一方、MCであるクィア・アイのアントニ氏が大変に褒め上手なので楽しく観ていられる。
しかし、初回のエピソードで披露された『ジャガイモを濡らしたキッチンペーパーで包んでレンジでチンしたあとオーブンに入れる』というテクニックが「初めて見た!すごい!」「これは時短だね!天才!」と評されていて、「じゃぁアメリカ人はなにをレンチンしているのか!?!?」と私を大変な驚きに包んだのだった。(しかもそれを披露した人は敗退した。)

調べると、番組で出てくるEasy-Bake-Ovenと呼ばれるものは、1963年に発売になったのち、未だにハスブロから販売されているキッズ用オーブンをオマージュしているらしい。National Toy Hall of Fameにも登録されているこのトイ・オーブンはかつてナカジマコーポレーションから日本市場にも流れたとのこと。へー!である。
だからまあ、オーブンの温度は出てこないし変えられないし時間になったら止まるという番組の中の表現についてはなんとなく理解できるものなのだな。
アメリカの人の意見としては「本物のオモチャのオーブンで戦うんだったらもっと面白いのに!」というのがあるらしく、それはたしかにそうかもしれない。おもちゃで料理対決をする、というのは、クッキングトイが花盛り…というよりもすっかり定番化した日本市場でこそ生まれるべき番組かも。ネトフリ・ジャパンでシリーズ化するのは無理でも、テレ東あたりで2時間特番みたいにするのはいかがでしょうか、私はいったいなんの話をしていたのでしょうか。

そうだ、ジャガイモをレンチンした件だった。
果たしてこれが驚きのハックなのだとしたら日本で日々発明されている時短レシピは一体なんなのか。私が想像するアメリカの人々が持つ合理性はレンジ調理には活かされていないのだろうか?アントニ氏はアボカドを石臼で潰していないで山本ゆり大先生にレンジ料理を習いに来日してはどうだろう。リュウジ先生とか。
たぶん、アメリカの合理性の発揮は「冷凍食品」に集約されていて、レンジはその相手でしかないことにやや気付きつつ、しばらく私はオーブン生活を続けてみようと思う。と言いながら1週間後にはレンジを買っていそうな気もする。