アメリカとにんじんのこと


どこかに行きたいよねえ〜
と思って読んだこの本がすーごく面白かった。

(この本はお友だちのだらちゃんがお誕生日にくれました。ありがとう!)

映画研究者であり食についての本も出している著者が、1年間のサバティカル中にロサンゼルスに家族で転居して、彼の地のあれこれを食べて考えたことがまとめられている。*1
LAの季節感のなさ、その代わりのように味わえる多様なエスニックフード、BBQカルチャー、ケチャップの存在とその安定感…などなどをふまえて、食べ物を味わうための「記憶の襞」が増えていく日々がこの上なく羨ましく感じて、ぐいぐい読んでしまった。アメリカという国とLAという都市、それぞれを取り巻く食の歴史も知らないことばかりだった。
そして、この中で名店として紹介される『ゲリラ・タコス』*2に猛烈に行きたくなった。「マグロのポキのトスターダ」「ポークベリーとイクラのタコス」「じゃがいものタキート」すっごく美味しそう。これ読んだ人全員行くと思う。

わたしの個人的な渡米経験(15年前)を思い起こすと、美味しかった記憶があるのはCostcoのサーモンソテーだ。生の大きな切り身がマリネしてあって、買ってきたままの容器で家のオーブンで焼くの。よく味付けされているからかしっとりしていて、当日も翌日も美味しかった。 あとは、クリスマスに出てきたハム。これも大きなハムの塊をオーブンで焼いて食べるもので、おせちみたいにクリスマスの日から何日もかけて食べた。いずれも巨大なので家庭にいないと食べられないもので、ホームステイをしていたからこそあやかれた味だった。
途中から一人暮らしを始めて、治安の悪そうな激安スーパーで缶詰の豆とひき肉を買ってチリコンカンにして食べたりしていた。ここのスーパーには、にんじんとかブロッコリーとかも缶詰で売っていて、「野菜ってこんなに缶詰になるんだ…?」と知った(買わなかったけど)。あとはもう少し治安の良さそうなスーパーでベーグルとかマフィンの6個パックを買って、1週間分のお昼としていたのを覚えている。
ファーマーズマーケットもホールフーズもあったけど、やっぱり値段の差が天と地ほどあったのであまり使わなかった。この本にも出てきたけど、ファーマーズマーケットで食事を完成させるには一定の生活レベルが求められる、そしてそれは日本でもアメリカでも同じ、今も昔も同じ。
ブリトーとかナチョスとか、フォーとか、Gyro*3とか、食べたことのなかったエスニックフードに親しんだのもとても良い思い出で、それがこの本を読んでいたときに思い起こされて懐かしくなった。


名古屋に来て4年目だけれど、この土地らしいものはそんなに食べていない。いわゆる名古屋めしはひと通り経験したあと、誰かが名古屋に来たときに食べている程度*4で、それ以上に特別な食材に出会ったりしていない。鮎が安い気がするけど、買ったことがない。
特にこの一年は、毎度毎度このブログに書いているけれど、ろくなものを食べていない。チリコンカンなんて、ましてやカレーですら、作らなくなってしまった。
ごく稀にスーパーに行っても何を食べたいかわからなくて買い物できない。ピーマンと豆腐と卵を買ってみる。ピーマンはサラダの代わりに生のままかじったりしている。香りもあるしみずみずしくて美味しい。あとはコンビニに頼って生きている。不必要かつ無意味に都市的な生活になってしまっていて、夜セブンとローソンとファミマを巡回して、食べたいものが見つからないと死にたくなる。…作り置きをしたらいいのよ私。チリコンカンを作ったらいいのよ。

 

昨日と今日は連休だった。大須に用事をしに行ったら賑わっている八百屋さんがあって、へーと釣られて見てみたら、巨大な「春にんじん」が安く売られていたので買ってきて焼いて食べた。美味しかった。
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しばらくにんじんで生きる。

 

*1:全然関係ないけど一般の会社員にもサバティカルがあったらいいのにね

*2:http://www.guerrillatacos.com/

*3:ギロ?ジャイロ?これはケバブと同じなのかよくわからなかったファストフード。ギリシャ料理らしいが、ピタパンとかナンみたいなのに焼いた肉を削ったやつが入っていて、まあ要するにケバブ

*4:本当はもっときしめんとあんスパの食べ歩きをしたいのだが全然できてない…