デザインかぶれだった*1大学生のころにMoMAに行って、初めてモンドリアンのどでかい絵『ブロードウェイ・ブギウギ』を生で観たら頭がビリビリビリ〜〜となってしまって、オーディオ・ガイドを聴いたら「絵の中に音楽がある」ことを理解して、ますます堪らなくなってしまって…好き!とニューヨークの真ん中で叫んだ*2というのが私とピエト・モンドリアン作品とのなれそめなのですが。
そのあとも何故かオランダに2回旅行するという縁があり(モンドリアンはオランダ出身)、旅先の美術館でお目にかかる度に好きの再確認をしておりました。
特にデン・ハーグというアムステルダムの隣の都市(電車で1時間くらいの距離)の市美術館はほぼほぼモンドリアンで持っていると言っても過言ではないレベルで、彼の初期から晩年までの作品群をずらりと見ることができました。同じ市内に超有名なマウリッツハイス美術館*3もあるけどそちらには行かず、モンドリアンとデ・ステイル*4の軌跡と功績にどっぷり浸かり、それはそれは痺れたことを覚えています。
はぁ…オランダ…また行きたい…と思っていたら
なんと愛知県が誇る爆イケミュージアム・豊田市美術館でモンドリアン展をやっているというではないですか。会期は7月10日から9月20日。夏休み企画としてモンドリアン、さすがだよ豊田市美術館。
国を出ずとも、ましてや県を跨がずとも作品が観られるなんて…これは必ず行かなくては!と決意しました。しかし、休みのたびに「あ〜行かなきゃ…」と思いながらついつい睡眠活動を頑張ってしまい、全然出かけることができず、9月になってしまいました。
で、今日やっと行ってきました。
いつも前置きが長くてすみません。
豊田市美術館は豊田市駅から15分くらい歩く、かつそのうち5分くらいはめちゃくちゃな坂道を登らなくてはならないという厳しい立地*5なのですが、道中の案内表示に従ってそのまま歩くと東入口という名の裏口に着きます。
この裏口が、正面入口に比較すると大変サッパリしすぎていて悲しいので、今回は遠回りして正面入口まで行きました。たぶん、プラス5分くらいの徒歩。
正面口は両脇が森になっていて、ゆるい坂道のアプローチを抜けるとパッと視界が開けて、ミニマルでモダンなファサードが水盤と共にドドーンと現れるという、とても素敵な体験ができます。3度目か4度目くらいに来たけれど、何度来ても空間としてめちゃくちゃ気持ち良いことが豊田市美術館の美点なので、初めて来る人がいたらこの正面入口体験も含めて味わってほしい。
なお、車で来ると駐車場が正面入口の手前にあり、素敵な正面入口が確実に体験できるので、車で来るのがデフォルトだと思われているのかもしれません。さすがクルマの国(豊田市への壮大な偏見と僻み)。
肝心の展示は、正直ちょっと物足りなかった…。思いがけず作品数が彼の作家人生の前半に寄っていて、それはそれで素敵なものは沢山あるし作風の移り変わりがわかるのは面白いのだけど、いわゆる「コンポジション」を作るようになってからの数が少なかった。年表に「キャンバスを斜めにした作品を制作した」とか書いてあるのにその斜めにした作品がなく…といった具合。デ・ステイルの関連作品ももっと見たかった。
ちょっと期待しすぎたなぁ、もっとビリビリしたかったわ…と思いながら会場を出て、他の展示室に行ってみると、それが、すばらしく体験を補完してくれるものでした。
『ひとつの複数の世界』と題されたコレクション展は、まぁ要するに「モンドリアン好きな奴はこういうの好きやろ?」的な作品がずらり。もっとちゃんとしたキュレーション文言が書いてありましたが結局はそういうことと思ってしまいごめんなさい。作品群は具象から離れたものを愛するツボをぐっと突いてくるものばかりで、すっかりドキドキしてしまいました。ウォルフガング・ライブ氏の『ライスハウス』*6という彫刻作品になぜかめちゃくちゃキてしまい、夢に見そうです。
さらに、次の展示室『美術とデザイン』のコーナーでは、モノに落とし込まれた「こういうの好きやろ?」がダメ押しのように目白押し。たまらんわ〜たまらんわ〜と心の中でよだれを垂らしまくって、大満足。
さすが豊田市美術館…構成の勝利…ありがとう…と拍手をして、裏口から帰りました。
ちょっとした高級マンションみたいな美術館の東入口aka裏口。