お化粧のことなど

退勤して会社を出るとき、これから帰る家は名古屋にあるんだ、いつものこの道を歩いていると東京の実家に着くんじゃないんだ、変なの…と思う。
すべてのことに馴染んで、もうどっぷりという気持ちでいる一方、なにもかもがイレギュラーだという気持ちもある。名古屋に越してきて1年半。もっともっと馴染んだらどうなるんだろう。馴染みはいつやってくるんだろう。


20代前半の頃、役職のある上司や取引先の女性でお化粧をしていない人を見ると、「なんでこの人は偉そうなのにお化粧はしてないんだろう」と思っていた。できる女性は仕事と同時に外見にも気を遣っていて美しいはずだという思い込みがあった。
素のままで美しい人はもちろんすばらしいが、お化粧していることで「他所様に見せる顔なのできちんとしています」という仕草があるのは社会人としてすばらしいことだと思う。それがマナーです、と新人研修でも習ったし、なんならそのあと別な会社でも言われた。
しかし30代も半ばに差し掛かり、気付けばわたしが「偉そうなのに化粧してない」な女になってしまった。とりあえず服は着ているよというだけで、あとは全部ぼさぼさだ。メイベリンの落ちない口紅を買って喜んでいたけれど、数日使い続けたら唇の新陳代謝がたいへん良くなり、「落ちる」のではなく「剥ける」ようになった。
こうなってみると、当時先輩たちの姿に覚えていた違和感は、もしかすると同族嫌悪だったのかもしれないと思う。こんな感じになっていくだろうという予感を否定したくて、こんな大人は嫌だなぁと思っていた可能性がある。
なりたくなかったそんな大人には、確実になっていっている。ぼんやり眺めていた先輩たちがどんな気持ちだったか、わからないけれど、たぶん開き直っていたんだろう。もう余裕がない。自分の顔を気にしていられない。マナーもわかっている。きれいにしていると自分が良い気分になることもわかっている。わかっているけど、もういい。そんな気持ちだったのではと想像する。


若手社員が職場で切羽詰まって涙を流していると、心底困る。こういう人たちのケアをしなくちゃいけない立場になったんだなと思うと、ますます非日常で、ますます余裕がなくなる。

とりあえず七連勤すると疲れるからやったらだめだ。備忘録。


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