ファイテンのこと

お正月。箱根駅伝、見てますか。

みんな、頑張ってる。

青学、駒大、頑張ってる。

みんな、なんか貼ってる。

みんな、ファイテン貼ってる。

 

あの首やら脚やらに肌色の円形のシールのようなものを選手たちが貼っていますよね。ピップエレキバンか何かと思っていましたが、あれはファイテン。正式商品名「ファイテンパワーテープメタックス(丸タイプ)」。あれを貼ることで何が起きるのか。テーピングなら痛いところをかためて不本意な動きをしないようにしている?のかな?とか。ピップエレキバンなら磁石がついているから、磁力?がなんらかの働き?をして血流を改善している?それによって筋肉の緊張を解く?みたいなイメージがつきますが。

ファイテン。材質はポリエステル、綿、ポリウレタン。その下に「技術:メタックス」と書いてある。メタックスってなんだろう。ウェブサイトには効能の記載はなく「貼るだけで強力ボディケア!」という文句のみがある。使用者の口コミとして「筋肉がほぐれます」「つけてるとつけてないとじゃ大違い」などと記載されている。

怪しすぎる。なんなのか。

って、前から気になっているわけではないのです。なんか貼ってるな、効果があるんだろうな、って思ってはいたけど、関心はなかった。それに、前から材質を知っていたわけではないのです。急に気になり始めたのは、去る12月29日に、ファイテンを体験したからなのです。

 

12月29日、名古屋から東京への引越し当日。

前夜は最終出勤で無駄に20時まで会社にいて、その後仲良くしてくれたメンバーと飲みに行き、おおいに酔って帰宅。すぐ寝りゃいいのに寄せ書きをつまみに(正確には東海セブンイレブン限定の台湾まぜそばをつまみに)残していた紙パックのワインを紙コップでぐびぐびと飲み、何時に寝たのかわからない。

そして朝、7時に、と約束していた姉がガランとした部屋に来てくれて、カーテンを外して最後の最後のゴミとして出した。早速エレベーターのないアパートの3階を上り下りしてくれる姉。恐縮です。私はもちろん二日酔いだ。

近所の喫茶店でモーニングを食べ、部屋に戻って最後の箱詰めと掃除。取れないと思っていた床の汚れの拭き方を教えてもらって取ったり、そういえば住んでから一度も洗ったことのなかった台所の換気扇を姉が洗ってくれたりした。私は何もできないことをつくづく噛み締める。最後の最後まで使っていたドライヤーと小さい掃除機を捨てに歩いたり、掃除機は小型家電として回収できないとのことで、リサイクルショップを検索して歩いたりした。リサイクルショップではネパール人のおじさんが「お金欲しい?」と訊いてくれたけど、要りませんのでもらってください、と言って渡す。ずーっと歩き回っている。

引越屋さんが来て、コンパルにお昼を食べに行き、管理会社が来て、クローゼットの扉に穴を開けたことを正直に申告して、部屋から追い出されたのが17時。手にはハンドキャリーの激重スーツケースが3つ、激重のリュックと昨日もらったお菓子類の入った袋が1つ。予約してある新幹線は20時20分。ゆとりがある…というか、ありすぎる。二人ともぐったりと疲れている。寝たい。寝るには…漫画喫茶か?スーパー銭湯か?プラネタリウムという手もあるか?と迷走の挙げ句マッサージ屋に向かった。

名古屋駅から国際センター駅をつなぐ地下街ユニモールにはコンパクトなマッサージ店が四つか五つ軒を連ねていて、どこかには入れるだろうと期待した。しかしどこも予約でいっぱいで入れない。クリスマスイブのヨセフとマリアのような、どんよりした気持ちで顔を上げたところに、ファイテンショップがあったのだ。

ファイテンショップにはいかにも寝られそうな卵型のカプセルと、足揉みマシンが何台も置かれていた。あのカプセルの中で何が起きるか知らないが、入って寝たい。横たわりたい。「あれに入りたいのですが」とお店に入るやいなや店員さんに言うと、「まずはお座りください」とイスをすすめられた。

そして、貼られたのだ、ファイテンパワーテープ丸タイプを、首に。

流れるような手付きでハイネックセーターの中に手を入れられてツボのようなところ4点にテープを貼られると、なんと、ガッチガチだった首が、さっきよりよく回る…気がする。「なんで!?」と騒ぐ私に、店員さんは何も言わない。考えるより感じろということらしい。さらに、メタックスクリームをそのうえから塗る。すると、さっきより首がよくよく回る…気がする。「え、メタックスってなに?」という問いもスルーされる。そして、それに最終的には、光を当てるという。その光は…羽生結弦選手も使っているらしい。マジで?


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すごいキメ顔だ。この手に持っているのが前述の光だ。この光も、なんなのかわからない。でも、それによって体がケアされるらしい。ケア…とは…?

光の怪しさ、テープの効果の謎さ、に、疑念が拭えないまま、それでも寝たいので、その光が全身で浴びられるというカプセルの中に入った。高濃度の酸素も吸えるらしい。25分で3000円くらいしたけど、寝たいのでもう前のめりだ。店員さんに「いまの目の見え方とか、身体の疲れの感じを覚えておいでくださいね」と言われて、横になった。

すぐ寝た。

25分後、カプセルから出てきて、たしかに視界がスッキリした…気がする。身体も楽になった…気がする。でもこれは光がどうこうではなく、真っ暗闇の中で短い睡眠をうまくとったからではないか。わたしは信じないぞ、と思いながら、とりあえず短期的な元気を取り戻し、晩ごはんに行きたかった店に行って新幹線に時間通り乗れた。ありがとうファイテン。全身バキバキになった姉はその夜、パワーテープを全身に貼って寝たら翌朝の身体が楽だったという。うーん、理屈はわからないし個人の感想だけど、ありがとうファイテン。みなさん、パワーテープの安いやつは1枚4円くらいだそうです。