準備不足なこと

先日、一週間のバケーションを取ってオーストラリアへ遊びに行ってまいりました。
散々ツイッターにも書いたのですが、あまりにも私が準備不足で酷かったので、そして酷さがちょっと面白かったので、メモしておきます。
f:id:l11alcilco:20230208004216j:image

まず名古屋からオーストラリアに直接行く飛行機はない。よって中部空港から羽田に飛び、羽田から成田に陸上移動し、成田からクアラルンプールに飛び、そこからパースに飛び、というルートをとった。遠い。
羽田から成田の電車の時間やら、羽田のコインロッカーの仕組み*1ことなどはよくよく調べていたし、もちろん現地到着後に行きたいカフェ、ビアバー、書店*2はしっかり調査&メモ済だったのだけど、もっとやらなきゃいけないことがあったのだ。

1つは、宿泊先について。
今回はおよそ20年前にお世話になっていた英語の先生のご自宅に泊まらせてもらうという極めて贅沢な旅程で、ホテルの予約をしなかった。
そして、メールで待ち合わせの約束をしながら一瞬考えた。「念のためお家の住所聞いておこうかな?…でも、聞いといても別に一人で歩いて行けるような場所じゃないだろうし、いいか。」

よくないんだよ〜。*3

パース行きの飛行機の中で配られた入国審査カードを見て、おや、と思った。そういえばこういうのには宿泊先を書く欄があるのだった。でも、住所がわからない。だから、書けない。とりあえず先生の名前と電話番号だけ書いた。まあ説明すりゃなんとかいけるっしょ。

いけないんだよ〜。

いけなかったのだ。わりかし頻繁に飛行機に乗ってきたこの十年、初めて入国審査で初めて別ルートへ移動させられてしまった。
友達の家に泊まる、住所は知らない、まではギリギリセーフだったようだった。きっと今どきそんなことはよくあるのだろう。

「じゃぁ友達は空港に迎えに来るの?」「来ません」これでアウトだった。

深夜2時、飛行機で一睡もしていない*4ため猛烈に眠い。早く寝たくてたまらないのに、離れた場所でパスポートを見られ、なにやら端末に入力され照会され、友達とはどんな関係なのか、迎えに来ないならどうやって家まで行くのか、何日滞在するのか、お金はいくら持っているのか、帰りの飛行機は、日本ではなんの仕事をしているのか、などなど訊かれる。怪しまれるってこんなに嫌な気分だったのかと、どんよりした。
もちろん質問には全て答えたし、ほとんど嘘もなかった。財布の中身は2千円くらいしか実際入っていなかったが、そこを1万円と言ったくらいだ。やっと疑いが晴れて、解放された深夜3時。「オーストラリア着いたぜイエ~イ」みたいな自撮りをする余裕もない。空港の中のカプセルのようなところに入り込んで、とりあえず目を瞑ったのだった。f:id:l11alcilco:20230208004254j:image

そして楽しい旅行が終わって、出国。ここが最大の山だった。
このコロナ禍の3年間。海外旅行にPCR検査が要るだか、隔離が要るだか、それは3日だか7日だか10日だか、いろんな制約があった。それがすっかりほとんどなくなったよね、という気持ちで挑んでいた今回の旅行。

なくなってなかったよね…。

日本に入国するには陰性証明もしくはワクチン3回の接種証明を出さなくてはいけないというルールはなくなっていなかったのだ。なぜだかわからないが、私はそれを全く関知しないまま、旅行に行って、帰ろうとしていた。

空港で意気揚々と帰りの便にチェックインしようとしたら「ワクチン接種証明を見せてください、さもなくばチケットは渡せない」と言われた。そこで初めて知ったのだ。
「あら、どうしよう、持ってないです。でもワクチン接種はしましたよ」
「接種証明が要ります」
「接種証明は家にあります」
「…」
「…」
スマホアプリで見せるのでいいんですよ」
「アプリ…」
一旦座って雑に検索すると、Visit Japan Webで事前検疫をしてください、といった内容が出てきて、これかしらと思って登録する。この中でも接種証明を登録する欄があるが、紙がないから何もできない。とはいえ「接種証明がないから日本に来ちゃダメです」との表示も出ない。これでいいのかなと思って再度カウンターに行くと
「ダメです。チケットは渡せません、乗せられません、あなたは日本に入れません、接種証明が必要です、これは日本政府のウェブサイトにきっちり書いてあることですので。」
「そこをなんとか、たとえば中継地点のクアラルンプールまで乗せてくれませんか。*5」とゴネると
上司が出てきて「ダメです。」
ダメなのだ。
帰れないのだ。
到着後の仕事のあれこれが頭を巡る。帰るためにはPCR検査を受ける必要がある、それにはどれだけ時間がかかるのか?空港に検査場はなく、知らない土地で病院を探して予約して検査して証明書を出してもらって、そこから飛行機に乗る手配をして?こんなゆったりしたところで即日予約即日検査なんて絶対にできないだろう、まして現時刻24時、明日は土曜日、無理だ。助けてくれる人は、さっきまでお世話になっていた先生ご夫婦がいるが、私を案内してさぞお疲れだろう。そもそもこの状況を説明して助けてもらうなんてできない、私にも見栄というものがある。しかし……
以上、脳内5秒である。
「もう少しなんとかならないか調べます。タイムリミットを教えてください」と言うと、「ゆっくりやりたまえ、あと30分か、45分はある」とグランドスタッフの上司は宣告した。
わたしは調べた。落ち着いて見ると、確かに接種証明書アプリというものがある。これか。スマホマイナンバーカードを読み込んで、紐付いている接種証明を見せるような仕組みらしい。なーんだ、初めからこれを見たら良かったのか。よかった、もうこれで解決だろう。安心安心…とインストールしようとするができない。お使いのデバイスはこのバージョンに対応していません、との表示。
f:id:l11alcilco:20230208004346j:image
ああ、終わった。
もう、今日は飛行機には乗れないのだな。
…と思うのはまだ早い。
私にはもう一つスマホがある。社用であって私用ではないが、まさに今こそ背に腹は代えられぬ。私が日本に戻れないことできっと会社も困るだろう、これが合理的な判断というやつだ。
社用スマホにアプリをインストールして、ギリギリ持っていたマイナンバーカードをかざした。ギリギリ記憶していたパスコードを入れたら、ああ、よかった、出てきた。4回も打ったワクチンの履歴が。
やっとの思いでその画面を見せ、深々とお辞儀をしてチケットを出してもらい出国に進んだ。悔し紛れに免税店で追加のお土産を買い、温かい紅茶を飲んでから飛行機に乗った。


さて、これで話は一旦終わりなのだが、どうも不満が残ることが1つある。
この大騒ぎを経て私は無事に日本に着いたのだが、羽田で飛行機を降りたらまさにその出口に「Visit Japan Appチェック隊」みたいなピンクのビブスを着た人が何人もいて、「このアプリを見せろ」「登録しているか?」と立ちはだかっていた。私が画面を見せると「別な窓口に行ってください」。でも私には接種証明が別にあるんですよ〜、ともう1つの画面を見せるも、チェック隊の人は受け入れてくれなかった。ターミナルの端っこの端っこまで歩いて窓口に行くと、やっと2つの画面を見比べて入国を許可して、ピンク色の紙を1枚くれた。
わたしはパースの空港で散々スクリーニングされたのに、なぜここでまたスクリーニングされなくてはならないのか?日本でチェックするなら、オーストラリアで「チケットは出しません、飛行機には乗せません」と言われて苦しまなくてもいいのではないか。
なんとか乗り切ってホッとしていたけれど、よく考えたらなんだか釈然としないままなのだった。

 

 

*1:第1ターミナルと第2ターミナルは預け期間が3日までだが、第3ターミナルは6泊7日まで預けられる

*2:結局はこれが私の3大欲求なのだな

*3:コウペンちゃんの声で

*4:これには別な準備不足があった。仕事で必要な資料作りが終わっておらず、移動時間で全部やった。

*5:クアラルンプールまで行っても何も解決しないのだが、喋っている時間帯が24時頃のため日本にいる誰かにコンタクトすることもできず、せめて移動した6時間後の日中になってから誰かに助けを求めようと思ったのだった。しかし接種証明のある名古屋の部屋の鍵は私しか持っておらず、基本的にどうにもならなさは変わらない。