生活日記生活のこと

 

ごまさんとの旅の2日間、個人的名古屋2大書店のOn ReadingとTOUTEN BOOKSTOREに行った。
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On Readingは元を辿れば、いか文庫の店主に「名古屋で良い本屋さんってどこですか」と転居当初に訊いて、ズバリと教えてもらったのだった。それからずっと、行くとほしい本が沢山あって、ギャラリーでの展示もいつも興味深く、私の中で名古屋の心の拠り所になっている。
今回もギャラリーを眺めてからお店に入ると、読みたいなと思っていた本*1がバンバーンと面で陳列されており、さすが…と思う。が、それらの本を手にとってみてもなんとなくやる気が起きなかった。重たかった。もっと言うと、世の中のさまざまなことにあんまり関与したくない気持ちがあるみたいだった。

TOUTEN BOOKSTOREはオープン直後に行ってから間があいてしまって、久しぶりに行った。すごく本が増えたなあと思い、そしてなんとなく神楽坂のかもめブックスのことを思い出した。店内の構成とか、漫画コーナーの位置とか。私にとってOn Readingが名古屋のSPBSで、TOUTENは名古屋のかもめブックスだ。それはさておき、急な階段を上った2階にあるスペースに初めて入ったら素敵だった。

どちらでも少しずつ本を買って、それは結局すべて誰かの生活のことばかりだった。スマホTwitterやらBlogやら、他人の暮らしのことばかり毎日読んでいるのに、それを本でも読みたい気持ちがあるらしい。

 

安達茉莉子 『私の生活改善運動』

手のひらサイズのzineのかわいさに比べて、内容が硬派ですてきだった。「これでいいや」と決別することにした作家の、その決意に至った経緯と実践の記録。
見ていて気持ちいいものだけで部屋を構成すること、だけでなく、あらゆる選択の機会に快不快を見極めて、嫌なものに嫌と言うこと。つまり自分を軽んじない運動についての記録だった。
そうなるのって時間の余裕が必要だ。この人もどうやら勤め仕事をやめて、そういう生活を得たらしい。Vol.4まで出ているのに日和って1巻しか買わなかったのを後悔した。

 

香山哲 『ベルリンうわのそら ランゲシュランゲ』

これは生活もあるけど世の中寄りとわかっていたので、ちょっと取り掛かるまで時間がかかった。でもえいやと読んだら、やっぱり面白くて、肝はここだなと思った。

…どんな人でも/何歳でも何を目指してもいいはずだし…/僕にもいろんな理想があるけど/すでに自分は生まれ育って今の自分になってるわけで…
「なかなか叶わないような理想だとしても持ち続けたい」⇔「できるだけ実現可能な目の前のことやろう」⇔「その他色々な意志や気持ち」 

私たちはまだらで中途半端だけど、考えながら生きるしかなく、かつ、それでようやってるよね、とでもまとめようか。それを読みながらも、自分ようやってると100%は思えないことがすこし悲しいような可笑しいような気持ちになる。

 

『ケアの記録』

検索しても書いている人の情報が出てこない。名古屋に住んでいる20代の方の、個人的なzineのようだ。本を読んで絵を観て、考えたことが書かれていた。タイトルよりも「ケア」じゃないな?と思ったら、最後に、本を読んだり絵を観ることが自分にとってケアになっている、というようなことが書いてあり、そうなのねと腑に落ちた。

 

植本一子 『ある日突然目が覚めて』

写真家でありエッセイストでもある人の日記。書くのを休む…ということをこの日記に書いている。子どもやパートナーとの生活をしながら、この人も自分をケアしている。
カウンセリングやセラピーを経てふと「どうしてそんなに自信を持てずに生きていたんだろう」という境地に辿り着く感じは、不思議だが、なんだかわかる。約3週間の入院後に仕事に戻ったら妙に脳に余裕がある感じがして「どうしてあんなに忙しい気でいたんだろう」と思ったことになぜか繋がった。

 

るるるるん 『3 ghosts write, cry and live!』


TOUTENでもらった日記のフリーペーパー。女性3人の文芸ユニットらしい。世の中いろんなユニットがあるものだ*2。それぞれの日々が一言ずつ書かれていてリズムよく楽しく読んだ。元気だったりそうでなかったりするのが、かわいくて楽しそうで憧れる。仲良くしている人たちに対して抱く憧れのようなこの気持ち*3は、一体なんなのだろうな。

 

武塙麻衣子 『驟雨とビール』

ごまさんに勧めてもらって、その場でネットで買った。
本を読み映画を見て昼寝をしてご飯を食べている日記。ビールも飲んでいる。猫とパートナーとなんだか素敵な暮らしをされていて、サクサク読むのが楽しかった。わりとコンパクトに淡々とまとめた日記で、こういうのを書くのもカッコいいな…と思った*4
飼い猫がテレビを倒して壊してしまったあとの一節が面白くて笑ってしまった。

 テレビをつけてみるけれど、縦線でまったく見えなくなった部分以外にも黄色い線が全体に広がり、もうほとんど何も見えない。気合いで「あぶない刑事」の録画を見る。よく見えないけれど話を全部覚えているので最終的には画面を見ずに音だけを聞いて楽しんだ。 


これらの書いている人たちが読んでいる他の人の日記(もしくは本など)も面白そうで、追って買うメモがパンパンになった。
そう、日記を書いている人は日記を読んでいるのだ。
この2年間のコロナ禍は、いろいろな人に日記を書かせ、日記を本にさせ、日記を読ませた2年間であったのではないか。そして日記を書いている人は日記を読むことで繋がり合っているふしぎな世界がここにあるようだ。本になった日記が90年代後半のホームページのリンクのように連帯している感じがする。


で、もちろん影響を受けて日記を本にしたくなっている。どうしよう。

 

 

 

*1:ヘルシンキ 生活の練習』を買おうと思ってた

*2:ごまさんと私は大まかにはピクニック・ユニットなので人のことは何も言えない。

*3:BTSにも似た気持ちを抱いている。アイドルを観ている人たちはきっとみんな抱いている

*4:で、今回のブログはかなり彼女の文体に影響されている