まだ数回しかお会いしていないけれど、パーソナルトレーニングの先生、つまりトレーナーさんというお仕事は、まあなんと面白く、面倒くさい仕事だろうと思う。
まず、毎日他人の食事内容が送られてきて、それを見る。面白いだろうなあ。そしてさぞ面倒だろう。
「こいつまたからあげ喰って、痩せる気あんのかよ」とか思うのかなあ。そのまま言ったりするんだろうか。
「むまさん、痩せる気ありますか?からあげは禁止です。」
まあからあげは罪みたいなものなので毎日食べてたらそれくらい言われるかもしれない。
私がお世話になっているトレーナーさんは大変紳士的な方なので、たぶん「脂質の割合が多いですね。からあげの頻度を下げてみましょう。」って言ってくれると思う。
(からあげ界のギャングであるCHIZZA)
そして、たまに(またはちょくちょく)トレーニングをさせる。
私のような、高校の体育以来スポーツチャンバラを数回程度しか運動はやってません的な人間には、まず、ここの筋肉を使うんだよ、ということから教えてくれる。
デモンストレーションしながら「こうやって、ここを動かします、どうぞ、嫌でなければここの筋肉触ってみてください、動いてますよね、わかりますか?」とやってくれる。
わたしは遠慮なく触るが、(すごい職業だな…)と内心緊張する。
信頼関係を構築する時間もない(初めましての30分後には筋肉を触った)のに、嫌でなければどうぞ、なのだ。もう、契約なのだ。お互い筋肉を触るが、それはお客様の筋肉のためであると。
まあ、お金を払っているし、契約書みたいなものもサインしているので、当たり前なのだが、美容師がお客様の髪や頭皮を触るのと同じように、トレーナーはお客の筋肉を触るし、お客はトレーナーの筋肉を触る。
どうしてもいやだな、みたいなお客様はいないのだろうか。それが心配だ。
そして、触ったにも関わらず、いざ自分がやってみるとわからないのが今のわたしだ。
トレーナーさんは「そうじゃなくてこう!」と姿勢を直してくれるが申し訳ない、なにがどうなっているかわからない。
申し訳ないながらもやってみる。キツい。キツいからどこかには効いているはずだと信じる。でもこの動きが正しいのかわからない。
映画を観ているのに教養がなさすぎて面白いのか面白くないのかもわからないような感じだ。またはご飯を食べているのに知らない味すぎて美味しいのか美味しくないのかわからない感じ。きっとこれは運動が苦手な人なら共有できる感情だと思う。
話が逸れました。
所定の回数が終わるとトレーナーさんはめっちゃ褒めてくれる。
「ナイストライでした!」それ10年ぶりくらいに聞きました、ありがとうございます、と思う。ゼェゼェしていて頷くことしかできない。
「全然余裕ですね!」と煽ったりもしてくる。そのときはゼェゼェしながら首を横に振る。
一呼吸つくとわたしは遠慮なく、「疲れます、でも、どこをどう使っているのかまだわかりません」と伝える。
面倒だろうなあ、こういう客。
まだまだ全然これからです、とトレーナーさんは言ってくれる。
まだまだ全然これからだな…と心の中で白目をむきながら私は頷いている。