水のこと

 

マレーシアの水道水はそのまま飲んでもよいのか?という議論が、旅行であれ移住であれ、ある。
その結論は「否」で、理由は水道管のメンテが悪く、錆や汚れがある可能性があるため、と聞いている。確かにこの半年のうち一度、蛇口から茶色の水がジャーっと出たことがあり、なるほどこれを避ける必要があるのだなと理解した。そのときはマンションの水道を1日断水して清掃した後だった。それ以外のとき、我が家の水は透明に見える。
でも飲まない方がいいんだって。
そっか。
じゃあどうするのか、というのが、住み始めた初めにスタイルとして検討し定めなければならないことであるわけだ。
そしてそれに答える先人のブログはたくさんある。というかこの地に生きるにあたっての殆どの事項について誰かがブログを書いている。ちょっと疑問に思ったことを調べると、誰かも同じ思いを過去にしていることがわかる。それを心の中にとどめずに書いてインターネットに置きっぱなしにしてくれることに感謝する。ありがとうございます、先人の皆様。もし本ブログをそういう目的で見てしまった人がいたら謝りたい。情報系ブログに行ってください。ここには便利なことは何も書いていませんので。

で、そういう情報ブログなり体験談ブログには究極の答えとして「自宅のあらゆる蛇口にフィルターをつけましょう」というのが頻繁に出てきて、またその設備は巨大で高級で、しかもそのフィルターが3か月でこんなに汚れる!まあびっくり!みたいなのも出てきて、もう、辟易した。面倒くさい。トランク一つで住めますよ、家具家電不要ですよ、みたいな触れ込みにつられて入居したのに、そのフィルターの設置工事みたいなのをしてフィルターを自分の持ち物として管理しなきゃいけないのも面倒くさいし、置かなければ見えてなかった汚れみたいなのに直面するのも面倒くさい。それをキッチンと洗濯機とシャワーにそれぞれつけましょうみたいなのはもう絶対に嫌だ、と思うのに、その人が「歯磨きする蛇口はそのままで気にしてません、あはは」みたいなことを書いていて余計に混乱する。野菜を洗う水と歯磨きする水だったら、歯磨きのほうが気になりませんか⁉と焦る。その人がいいならそれでいいんだけどさ…

とかやっていて、私は結局「飲んだり食べたりする水はペットボトルで買うが、それ以外は水道そのまま」ということにした。それが一番安いし、手間もない気がした。1週間に1.5Lの水が6本くらいあれば足りるということがだんだんわかってきて、週に2回くらい、3本ずつくらいおつかいに出た。
すると1.5Lの水のボトルをどこで買うかが今度は問題になり、最寄りのコンビニより5分先のスーパーのほうが少し安いことに気付いてそこで買うようになった。が、ある日そのスーパーが水のペットボトルを置かなくなり、マジか、と今度はもっと離れた大きいスーパーで6本パックを買うようになった。通勤の帰りに買うので、背中にラップトップの入ったリュックがあり、腹側にペットボトルのパックを抱えている状態になると、うまく家の鍵が開けられなかったりした。たまにスパゲッティを茹でたりするのにこのペットボトルの水を使うと少しばかり心が痛んだ。この水の大半は捨てるのに、この水はわざわざ買ったものだというのがどうもしっくりこないのだった。湯切りするのがもったいなくて、カップやきそばをカップ麺として食べたこともあった。スープを飲み切ってはならぬ年頃なので、結局捨てるのだが。

そんなある日、知り合いになった日本人の方が「転居するので不用品を売ります」というお知らせをしていた。へーと思ってみていたらブリタがある。ブリタとは(みなさんご存知でしょうが)水をろ過できるポットのようなものだ。とても安い。すぐに「ほしいです」とメッセージした。売ってもらえることになった。フィルターも5個もらえた。
これで私のペットボトル水生活は唐突に終わった。もう、ブリタ越しの水はペットボトルと同じクオリティであると思うことにしたのだ。
念のため「このお水はそのまま飲んでましたか」と売ってくれた人にきいてみると「はい、とくに問題なく」とのこと。ありがたい。じゃぁわたしもそうします。下手に検索すると「ブリタを通した水は野菜を洗ったりするのに使って、飲み水はそれを煮沸して…」とか出てきたけど、もう、この前の持ち主の「とくに問題なく」だけを信じることにします。
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ブリタは、始める前に2回も水を捨てないといけないんだという。もったいないが、溜めて、捨てた。2回。つぎカートリッジを変えるときは、捨てる水をペットボトルに入れて有事の際の水にしよう。ということを覚えていられないかもしれないから、ブログに書いておこう。

 

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