好き、と思っている書き手のお一人である、じろまるさんのご本を読んだ。
食べ物が好きで食べることが好きで、作ることも好きで、なおかつ書くことも好きな人の書いたエッセイ。WEBで読んでいた内容もいくつかあって(かつそれがすごいインパクトのある話だったので忘れられず)、あーこの話ね…フフフ…となる章もあったけど、おおよそ楽しく読んだ。
なにより、彼女がかつて名古屋で飲食店をやっていて、それがとってもステキに楽しそうなお店であったことが書かれており、羨ましい。行きたかった、通いたかった。だし巻き卵、オーダーしたかった…
そんなことを思いつつ、約3年のこまごまとした食べ歩きを経て、名古屋最愛と呼べるお店が私にもできた。
超繁盛店なので名前を出すのも憚られる、ので書かない。塩味がビシッとしていて美味い、値段に比べて盛りがいい、メニューの気が利いている、好きなビールが置いてある。客層もよく、混んでいることすらグルーヴ感に繋がっていて、激混みで入れない以外は問題でない。立ち飲みなので一人で気兼ねなく入れるところも好き。ガランとした店に一人でポツンとしてるのは意外と疲れるから。
近隣の美容室に通ったり近隣の書店に行ったりするたびに「とりあえず入れるなら入ろう」と思って店の前まで行って様子をうかがう。
入れるときは入ってサッと飲むか、調子に乗ってだらだら飲む。
気が付くとアラ良いお値段ですね、となるのだが、それを許せる酔いと美味しさと、心の中で推しと呼ばせてもらっている店主の笑顔。挨拶するだけでときめき補充されるのでありがたい。
先日ちょっと間が空いてそのお店を見に行ったら、隙間があったのでスッと入れてもらった。イチゴと春菊のサラダとか、白子のフライとか、手書きのメニューを目が何往復もしてしまう。いつものポテトサラダも捨てがたい。迷う。一人飲みはたくさん食べられないことが一番の課題だ。
ああ、あれも、でもこれも、と思っているところに、別な一人客が入ってきて、注文した。
「カルーア・ミルク」
あら、珍しい。最初からカクテルですか。や、別になにも言いませんけどね。
で、そのあとよくよくメニューを眺めて
「ロッシーニ。あと、ボンゴレ。」
えっっ…………思わず私はスマホに焦ってメモした『ロッシーニとボンゴレ、カルーア・ミルクの男』と。
なんだこれ、ミステリー小説?新作オペラ?小劇場?それとも村上春樹(殆ど読んだことないけど)?とにかくこの3つの並びにソワソワした。
人のメニューの選び方にあれこれ言うのはマナー違反だし、そんなの個人の勝手でしかないのだが、わたしはレストランや飲み屋では一緒に話し相手よりも周りの客が気になってしまいがちなのだ。ましてや一人でいたら他人を眺めるのもつまみ代わりになってしまうので、申し訳ないがそのオーダーを存分に驚かせていただいた。頼むものの組合せがあまりに自分では辿り着かない世界観だ。ステーキを食べながら牛乳を飲む感じ…そして貝のスパゲティ…なかなか想像が追い付かない…まあ私はペヤングに牛乳が合う派だからそんなに変わらないか…わからないけど…すべて受け入れて行こう…最近ぺこぱの影響を受けているので…
と思いながら食べたあん肝と柿のテリーヌ仕立てはめちゃ美味しかった。他人のことは気にせず好きな店で好きなものを食べ、推していこう。それでよいはずだ。