名前と構われのこと (カーブスのこと(3))

 

カーブスに行くと、自分と同じかそれ以上の年齢の女性しかおらず、、、まあ自分と同じくらいだろうという人は実際ほぼおらず、おおよそ全員先輩である。おそらく自分の母(over80)と同じくらいの方もちらほらいらして、長く続けているからだろうか、姿勢の良い方が多い。素晴らしいことである。「筋肉って大切!」と手書き風の文字でデカデカと書いてあるのを眺めながらマットの上で足踏みし、それはまったくもって真実だと思う。


この人生後半組ばかりが集まった空間の中で、唯一別な光を放っているのがスタッフのみなさんである。20代前半だと思われる。制服のポロシャツを着て、いつも元気でニコニコしている。どのようにシフトを回しているのかわからないくらいにいつも同じ人たちがいる(たぶん回ってない)。事務もするし勧誘もするスタッフさんだが同時にトレーナーでもあるので、メンバーのみなさんが筋トレマシンで運動しているとサポートしてくれたりもする。

なによりすごいのは、スタッフさんたちは来るメンバーの顔と名前を完全に覚えているということだ。

カーブスの店のドアを押して入ると「むまさーん!こんにちはー!」とデカい声で挨拶してくれる。入会の次に行った日からもう呼ばれた。時間予約制ではなく、来るのか来ないのかわからないメンバー数十人(もしくは100人以上か?)を記憶していて、アトランダムにやってくるのにすぐ対応する。
これがこのサービスの肝なのではないかと思う。
たしかに30分で体のあちこちを鍛えたような気になるとか、実際の効果とか、あると思うのだが、この来店するメンバー1人1人をAnonimousな存在にしないこと、ドアが開いて人が来たから「こんにちは」なのではなく、「○○さん、こんにちは」であることが、「また来よう」と思わせる大きな要因なのではないか。

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ちょっと別な話になるが、最近縁あってとあるバーでアルバイトをときどきしている。
仕事はお運びとグラス洗いと、お客さんと話すことである。前半の仕事もままならないが、後半の仕事がもっとままならずかなり不安。特に初日に「うちのお店は常連さんが多いから、早く顔と名前を覚えてね」と言われたのがプレッシャーで血の気が引いた。結局何度かシフトに入るうちにマジで何度もお会いする方がいてさすがに覚えた名前もあったが、何週間も経った後に再び会う人の名前などすぐ出てくるはずもなく、なにかしらの方法でカンニングして解決するしかない。
「速く覚えるコツは会話の中でお名前を呼ぶこと」とも言われた。が、なんでかわからないがそれが非常に苦手である。それがお客と店員という関係でなくても、たとえば友人同士でも、同じ会社に勤める社員同士でも、絶対にいいことだしやるべきこと。人は自分の名前を呼ばれるとうれしい、それはかなり真理だと思うのだが、なにが私を阻んでいるのだろうか。照れか。もしくは他人への関心のなさか。両方か。

などと思いながら働いている…というかカウンターの中に突っ立っていると、話の流れでお客さんが「結局こうやって出迎えてもらって、親切にしてもらって、世間話をするために、こういう店に来ている」というようなことを言っていた。
そうだよな。
うまい食事がある、うまい酒がある、というのはもちろん大切なことだが、結局わたしたちは「構われたい」のだ。そのためにお金を払っているものがいくつもある。
もちろん構わないでくれるお店に行きたい場面も多いし、よく知らない人に詮索されたくないこともある。“常連さん”ばかりの店は怖くて入りたくなくて、あだ名で呼び合う店なんてもってのほか。人との関わりは薄い方がラクで、職場も飲食店もフィットネススタジオも、友だちを作ろうと思って来ている場所なんてほとんどないのだ。 でも、でもその一方で、誰かとなかよくなりたいとか、心の内を吐露できる相手が欲しいとか、そういう思いもある。構われたい。その場がインターネットになることもあるし、スポーツの仲間になることも、ママ友同士になることも、学生時代の友人になることもあり、また占いやリラクゼーションサービスになったり、キャバクラになることも、わたしが勤めているような店(キャバクラではない)になることも、カーブスになることもある。

少なくともカーブスに行けば、わたしを歓迎してくれる人がいる。下の名前で呼んでくれて、「今日も頑張って来れましたね」とねぎらってくれて、身体を触ってトレーニングの姿勢を修正してくれる。帰りがけには「○○さん、次はいつ来れますか」と訊いてくれる。それが支えになっている人がたくさんいて、このサービスが続いているのではないかと想像している。

 

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