バランスとビーフンのこと

 

外食が好きだし飲み会も好きで、誘われたらなるべくお断りせずに行く。
というわけで昨日はお誘いいただいたアフタヌーンティーの会にお邪魔してきた。日本人の女性が私を含めて4人おめかしして集まって、素敵なホテルのラウンジで昼間ゆったり喋るという良い会だった。なお全員酒飲みなので次は飲みに行きましょうと言いながら紅茶を飲んだ。
アフタヌーンティーのメニューは珍しくコース仕立てで、一皿目にクラッカー、二皿目にセイボリーのプチフールが4品、三皿目がケーキ的なもの5品で、最後の最後にあたたかいスコーンが2種1つずつ出てきた。ゆっくりゆっくり出てくるのでお腹がいっぱいになる。4人のうち2人はケーキを半分残して持ち帰り、スコーンも同様にした。私はたったか食べてケーキの 1品を半分だけ持ち帰ることにして、スコーンを食べた。正直、スコーンが2種出てきた瞬間は「ちょっと無理かも」と思ったけど 1つ食べたら「全然いけるわ、美味しいし」となった。焼きたてのあたたかいスコーンを諦めるのは良くないことだものなあ、さてもう1種も行こうかしら、と思ったのだけど、なんだが他のみんなが「やーもう無理ー食べられないー」と可愛く嘆いているので、空気に乗ってスコーンを1つだけ持って帰ることにした。
f:id:l11alcilco:20240908195939j:image

1日分のカロリーは十分摂取したと思うし、12時に待ち合わせて15時くらいまでのんびり食べていたので確かに満腹ではあるのだが、こういうときなんだかどうしても落ち着かない。塩っぱくて味が濃いものが食べたい。名古屋にいたら吉野家に駆け込んで牛丼に紅生姜を山盛り乗せて食べるか、コンビニをはしごしてカップ麺の棚の前でウロウロして結局どん兵衛かき揚げそばを買って帰るか、ラーメン屋に駆け込んでとんこつラーメンに紅生姜を山盛り乗せて食べるかした。もしくはファミチキ。 ※東京の場合はここに富士そばという選択肢が加わります。

さて、小麦のものばかり食べたからご飯を食べるべきかもしれない…が、麺がいい。麺とタンパク質が必要だ…うーん…ドライのワンタンミー*1が食べたい…そうだなワンタンミーにしよう…と思いながら帰りの電車に揺られた。そういったものをどこで食べるべきか、途中の駅で降りて屋台にでも行くか…とGoogleマップを見もするのだが、ちょっとキレイな格好をしているのでなんだかなぁとか自意識過剰になって、とりあえず帰宅した。そうするとどっと疲れて、「ああ、もう、袋麺でも茹でて食べるか、タンパク質がないけど…」と挫けてしまう。のだが冷蔵庫を開けてみるとそこには2日前に自分で焼いた鶏肉と青梗菜がタッパーに入っている!ありがとう過去の自分、サンキュー、マカシー、コマウォヨ、、、と言いながら、そのタッパーにビーフンを入れて、水を入れて、電子レンジにかける。

このビーフンをタッパーに入れてレンチンするという食べ方が、この半月ほど私の中で大流行している。

先月はXGのコンサートで予定以上にグッズを買ってしまう等の財政的ミスコンダクションがあれこれ発生して財布の中身がほとんど空になり、月の最後は緊急用の口座に手を出しながら過ごしてしまった。その中でいかに楽かつ安くご飯を食べるか、と激安の袋麺をまとめ買いして食べてみたりしたのだが、それは流石に肌が荒れたり太ったりなどの弊害があった。次にスーパーに行ったとき、多少値段はするがビーフンの方が、米だし揚げてないしまだマシか?と思ってビーフンをまとめ買いしたのだった。
ただビーフンは汁麺にするにせよ、炒めて食べるにせよ、「戻す」工程が必要なので袋麺よりも一手間面倒くさい。面倒だとあんまり食べる気もしないなぁ、とぐずぐずしていたのだが、ある日ビーフンを戻そう水を入れていたときに気づいたのだ。このまま食べられるんじゃない?と。戻してから茹でる、とか、戻してから炒める、とかじゃなく、このまま、レンチンだけで。
戻すときは水は少なめ、レンジにかける時間も30秒くらいのものだったが、たっぷり水を入れて、1分レンジにかけて、出してみるとまだパリパリのところが残っていたので、麺の上下をひっくり返してもう1分レンジにかけた。するとビーフンは「戻っている」というより「もう食べていいよ」くらいの状態になっていた。「あら、いいんですか」と応えながら食べる。スープの味が染みているとかそういう難しいことはできていないが、全然問題ない。ということがわかってから、作り置きのおかず*2をタッパーに入れておき、温め直すついでに同じ空間に無理やりビーフンを入れ水も入れて麺にしてしまうという新しいズボラの技を確立したのだった。
f:id:l11alcilco:20240908194043j:image
人にお見せするようなものではないけど食べ物としてはこういう見た目になります。赤いのはサンバル(辛味ペースト)。

しかしこの、キレイで、美味しくて、楽しくて、という食事をした後に、(食に貴賎はないけれど)雑で、ジャンクで、ひとりぼっちの食事をしたくなるのは、なぜだろう。同日、めちゃくちゃ食べる友人*3が、素敵なイタリアンレストランの帰りに松屋に寄っている様子をInstagramのストーリーズを流していて心底共感してしまった。しかしこれが、「いいものは食べたけど、もともと自分は大したものじゃないんだよ」というバランスを取るためのものなのか、「見知らぬ味から知っている味に帰りたい」ということなのか、そのあたりがわからない。わからぬまま、なんだか、焦るような気持ちで食べている。そしてこのカロリーがなければもっといい人生だったのにと思って落ち込むことさえある。でも食べる。
父が仕事をしていた頃、外で大いに飲んでから家に帰ってきて、改めて食事をとりたがる様子に「飲みながらちゃんと食べてきてくださいよ」と母と私は文句を言ったものだったけれど、今になってなんだかそれがわかる気がする。やっぱり、知っている味に帰ってホッとしたいということなんだろうか。赤ちゃんのおしゃぶりのようなものだろうか。

 

 

----------

日記本『関係あること 近くにいること』大好評販売中です。ぜひ!

こちらのイベントもよろしくお願いします🍉🗼 

 

*1:極細のカリカリした麺に甘しょっぱい黒いタレを絡めて食べるまぜそばみたいなもの。気持ちばかりのチャーシューと青菜あり。大好物。

*2:正確に表現すると、作ったおかずの残り半分

*3:正確には友人の妻だが、もう友人ということにさせてほしい