クスクスのこと(または、クスクス弁当はOLを助ける1つのアンサー)


クスクスが好きなんです。

 

 

「タブレ」という食べものはクスクスと細かくしたお野菜を混ぜたサラダと認識しているのだけれど、初めて食べたときに、「このつぶつぶしたやつ、炭水化物なん!?」ととても驚いた記憶がある。
初めてライスサラダを食べたときもショックだったけど、そのときはお米はもうお米にしか見えてないから「お、おぅ…そういうアプローチね…」という引いた印象だった気がする。

ライスサラダにはビールを野菜と認識するみたいなドキドキがある。しかし(当たり前だが)ビールは野菜ではない、つまり、嘘だ。ライスサラダも、「サラダは炭水化物じゃないヘルシーディッシュよ」という観点から見れば嘘。クスクスの入ったサラダも同じ観点でいくと嘘。なのだが、クスクスは、私にとってサラダの世界から先に来ているので、ライスサラダよりもヘルシーで嘘じゃない気がしている。
それがクスクスの第一印象だ。

 

第二の出会いは、西荻窪のモロッコ料理店に行ったときだと思う。そこはツレヅレハナコさんかどなたか、著名な食ブロガーさんが紹介されていて、憧れて行ったのだった。ここで初めて、主食として、温かいクスクスを食べた。
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(画像が荒いのは2014年訪問時の写真を引っ張り出してきているためです)

おーいしーいなー!と思った。
ふかふかで。さらさらで。スープがじゅーと染み込んで。
お店のこじんまりとした感じと、お店のシェフの現地っぽさと、合わさって、なんだかとても良い体験だった。
それで、お会計をしながらシェフに訊いたのだ、「どうやってクスクスを作ったらよいですか」と。その、お店に沢山ある、素敵だけど大仰で家に置くには場所を取りすぎる蒸し器がないと駄目ですか…?というのが、本心だったのだが、彼は答えてくれた。
「好きな器にクスクスを入れよ。クスクスが浸り少し隠れるほどの熱湯を入れよ。オリーブオイルをちょびっと回し入れ、フタをせよ。3分待ち、フタを開けたら、フォークで掻き回し、ふかふかにせよ。以上。」
「以上?そいだけ?」
「最後にまたオリーブオイルを足してもよし。」
「わかりましたどうもありがとうごちそうさまでした。」
わたくしはその日ニヤニヤしながら西友を通って帰った。

 

そもそもクスクスはパスタのようなものだけど、パスタ以上に調理されている食材らしい。セモリナ粉を練って小さくして、蒸して、さらに、乾燥させたものだそうで。そうなのか。だから、お湯に浸けて、戻して、だけで、いいのか。


そこで、一介のOLとして、トライしてみたのがクスクス弁当である。

まず、何度か、スープジャーに入れてみた。
スープジャーにクスクスを入れて、ぐらぐらに熱くしたスープを入れて、フタをして会社へ。すると、ほどよく戻ったクスクスとスープを満喫できる…と思っていたのだが、実際はスープをMAXで吸い込んだクスクスがジャーの中でパンッパンになり、味は美味しいのだが永遠にもさもさする昼休みを過ごすことになったのであった。

反省を踏まえて、クスクスを敷いたお弁当箱…というかタッパーにお湯とオリーブオイルをくるりとし、トマトペーストをペッとつけ、もさもさとかき混ぜた、その上におかずを載せた。
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これはなかなか悪くない。おかずが汁っぽいのは大歓迎だ。ご飯の代わりにクスクスを使った丼になる。すでに米を炊くのが面倒な段階に突入しているあなたにおすすめ。ちょっとイケているようなお弁当ができる。食前にレンジでチンすれば尚良し。かつて挑戦しては頓挫していたパスタ弁当のように、のびてぶよぶよにならないところが、とってもいい。



しかしこれにはまだ改善の余地があった。

紆余曲折を経て、最終的に行き着いたのは「お湯を会社で入れればいいじゃない」。

クスクスを、小さいタッパーに入れて、オリーブオイルをくるりと垂らし、家を出る。スープなりおかずなりは、別なタッパーなりジャーに入れて持つ。お昼になったら、給湯室に駆け込んでポットからお湯をクスクスに注ぐ。
(駆け込むのはクスクスにお湯を注ぐのを見られるとちょっと照れるからです。)
そしてすかさずフタをして、待っている間におかずをチンする。電子レンジがない場合は、クスクスの温かさに頼るメニューにしよう。ある場合は、スープをタッパーに冷凍しておいて、そのまま掴んで家を出ると朝が楽になります。スープでなく、カレーでもいいね。むしろカレーが良いくらいだ。
レンジがチンとなったら、タッパーの中でぱんぱんに膨れたクスクスを、フォークでふわふわにしながら食べる。おかずかスープ(またはカレー)に絡めながら食べる。うまい、だって、要はクスクスだけはほぼ正式な姿で、出来たてなのだから。
f:id:l11alcilco:20181117005336j:image(このときは膨らみ具合を想像できなくてクスクスが溢れている)(このフォークはなんなんだ)

 

絶対気付くの遅い(社会人歴10周年)けど、これが、1つの、OL弁当の答えだ…!と、結論づきましたので、ここにお知らせいたします。

思うに、学校に持っていっていたお弁当は、レンジや給湯器がなかったがゆえに、あの形式だったのだ。
ごはんに、赤緑黄黒茶色のおかず。梅干、ゆかり、ふりかけ。冷めても美味しい味付けで。
それはやっぱり日本人のお弁当の理想形だろうし、栄養バランスも良く、楽しいけど、あまりにも手間で面倒で、私にはもう取り組めない。
でもお弁当はやっぱり節約にもなり、薄味にできて、ちょっとホッとする時間をくれるものでもある。だから、「おにぎらず」とか「スープジャーに餅を入れよ」とか、手間を省いたスタイルが世に溢れる。
そこに、どうでしょう、クスクス弁当。
自炊のおかずを余らせて冷やしておく。乾燥したままのクスクスをタッパーに入れて鞄に入れる。
わたしだって曲げわっぱに憧れていたけど、いろいろ吹っ飛ばしてこうなった。丁寧な暮らしは無理でも、楽して好きなものを食べたいし、その権利くらいあるだろう。
そんなわけで、どうでしょう、最速の炭水化物・クスクスを使った雑な弁当。ぱっと見全然美味しそうに見えないのが問題だけど、あとはおかずの味次第なんだ。f:id:l11alcilco:20181117005506j:image