ドレスコードのこと


むまというハンドルネームを自称し始めてから20年くらい経つのだが、そのうちの14年ほどは「gommのむま」とも名乗っている。
gommは同級生のごまさんと私が二人でやっているピクニック・チームである。ピクニック・チームが何をやるかというと、ピクニックだ。公園に敷物をしいて、飲み物と食べ物を用意してのんびりとする。そこにいろんな人に遊びに来てもらう。要は花のない花見のようなものだ。
最初にgommを始めたときはピクニックチームという呼称ではなかったのだ。リトルプレス*1を売りたいけど、どこで売っていいかわからなくて、ピクニックという場をつくって、来た人に買ってもらおうというのが始まりだった。いわばお茶の出る露天商*2。やってみるとピクニックというのはお金もそんなにかからないし楽しいねということが分かった。あと「映え」た、当時そんな言葉はなかったが。

そのうち、ドレスコードを決めてピクニックしよう、という追加の個性がついた。
2011年、東日本大震災があった年にgommはスタートした。3月以降、いろいろなものが自粛の名のもとに中止になって、花火大会やお祭りなんかもそのうちの一つだった。今年の夏は浴衣を着る機会がないね、という話から、それなら浴衣を着る用事をつくればいいじゃない、と発想したんだと思う。10人くらい浴衣で集まって渋谷から地下鉄に乗り、浅草でかき氷を食べた。そこからドレスコードを決めて集まると楽しいぞということに気が付いて、ボーダーを着たりドットを着たり、白を着たり緑を着たり、オーバーオールを着たりパーカーを着たり半ズボンをはいたりしながら、ピクニックをしたり出かけたりした。「みんなでお洒落するとたのしいね」とごまさんが言って、わたしは「全員同じものを着ていると異様で面白いな」と思った。

そんなわけで余所様にドレスコードを強いて強いての10年以上を過ごしてきたわけだけど、ここに来て自分がドレスコードに苦しむことが増えてきた。
マレーシアはドレスコードが好きな国のようなのだ。オフ会で「オレンジがテーマです」と言われたり。ダンス教室で「ピンクを着て来て」と言われたり。会社の宴会で「学校をテーマに…」と言われたり。
余計な服というものを持ってこずに引っ越してきてしまったので、タンスの中をガサゴソやって「あ、ピンクあった!」ということにはならず、服を貸し借りできるような間柄の人もいないので「こないだ着てたシャツを明日だけ…」とも聞けない。ないものはない。一人で「そこになければありませんねー」の自作自演。そのたびにぐぬぬと苦しむ。買う。似合わなかったり、二度と着なさそうだったりする。せめてもっと汎用性のあるものを買わせてくれえ、と思う。
これがgommが今までやってきたことなのか…とちょっと反省する。着たら楽しいからいいんだけど…来てくれた人も着たら楽しいからいいと思ってくれていたらいいんだけど。

 

今週末は弾丸で韓国ソウルに行ってきた。推しのコンサートを見るための1泊4日*3。そこでも出くわしたのだ、ドレスコードに。

このコンサートの開催が発表されたのは1月後半で、逡巡*4の末にチケットをとったのが2月頭、ほんとに行くのかとビビりながら飛行機の券をとったのがその翌週で、さらに有休をとって…とかなんとかしていたらもう3月になっていた。
そして3月9日に公式から「ドレスコード、初日は白+青で!2日目は黒+青で!」という告知がサラッと出て、「あ、そういうのあるの…?」とポカーンとしたわけだ。初日に行くので慌ててクローゼットの中で白を探す。…Tシャツと半ズボンならある。青は、デニムを履くか、帽子ならなんとか。けど、ソウルって今…気温6℃!?無理だ。対応できるものなし。無視して、あるものを着ていっても別にいいのだが、そんなの…そんなの悔しい。
そうこうしていたらオタク友達から「マレーシアから行く仲間みんなでバジュクロンを着ようって話してるんだけど、むまさんも着る?」と連絡があった。バジュクロンというのはマレー系のムスリム女性が着る伝統衣装で盛装だ。同時に「これ私のお下がりだけど、着る?」と白いバジュクロンの写真が送られてきた。「え、貸してもらえるの?」と返すと、「あげるよ!サイズアウトしちゃったから」と言われた。
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い い ん で す か …!?!?!
あまりの親切心に慄いたり、借りを作ってしまうことを恐れたり、なんでこんなオファーをしてくれるのかわからず一瞬頭の中がぐるぐるしたが、すぐに「ここは素直に甘えよう」と決めた。
そもそも今回コンサートに行くのを最終的に決めたのは、彼女が一緒に行こうと言ってくれたからなのだ。数少ない貴重な友人の誘いを断るのはもったいないというのもあるが、もっと現金な話をすると、マレー系ムスリム女子と旅行できる機会は後にも先にもなかなか訪れないのではないかとも思った。そんな状況でさらにマレーシアのファンのコミュニティに混ぜてもらえるチャンスがあるなら積極的に参加したい。あと何より民族衣装みたいなものを着るのは大好きだ。
結局この豪華なバジュクロンのお下がりに合わせて、白いインナーを通販で買い、さらに直前に行ったバーゲンセールで青いダウンベストと白いスカートを買った。ドレスコードは経済を回しがち。スカートは夏物なので下にスパッツを履く。念の為ホカロンも持つ。寒さにおびえながらの渡航になった。

 

昨日のソウルの最高気温は19℃。よく晴れたポカポカ陽気で、バジュクロンにはちょうど良かった。マレーシアファンの集いは大変華やかで、完璧にドレスコードを守っていた。
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かわいかった。やっぱりドレスコードがあるって楽しいね。

 

*1:と書くとかわいいが実際に作っていたのは私が撮ったごまさんの写真(しかも無理やりコスプレさせたものなども含む)をカレンダーにしたものなので、わりとハードコアな商品であった。またカレンダーもやりたいな。

*2:無許可

*3:なぜわたしはいつも死にそうなスケジュールを組むのだろうね

*4:ほんとうにアジアツアーは開催されないのか?されるなら韓国じゃなくもっと近所(バンコクとか)で観たいのだが…という逡巡。なおマレーシアに来ないかという期待はしていない、諦めている。マレーシアは名古屋みたいなものなので(“名古屋飛ばし”で検索してみてください)。