別れのこと

 

しばらく勤め先で一緒に働いていた人が会社を辞めてしまった。
とても頼りにしていた人なので、とても残念だし、率直に痛手。自分も転職を繰り返した3社目にいて、「会社と自分の人生はまた別だから」をポリシーにホイホイ辞めてきたけれど、辞められてしまうとこんなに大変なのかと、辞められる側になって初めて思い知った。小さな組織から一人の退職者を出すことはどんなミスよりも大きな損失だし、上からはマネジメントができていないと見られるし、なによりもどーんと傷付く。


彼は突然出勤しなくなり、そのまま退職してしまったので、なぜ辞めたのかがわからず、しばらくもやもやした。あれが悪かったかな、それがしんどかったかな、あのときああしていれば、こう伝えておけばよかったか、などと考え始めると悲しくなった。これはお付き合いしていた人と別れたときの気持ちに似ていた。明確な理由を言ってもらえず、ただし何かが決定的に(もしくはコツコツと積み重なって)嫌になって離れますという。こちらには交渉の余地がなくて、受け止めるしかない。記憶を反芻して、勝手に反省するしかない。
…とうじうじしていたら、最後の最後で退職理由を本人から教えてもらえた。納得したものの、結局こちらの不手際が原因だったので、しばらくしょんぼりした。


それでも会社は回る…というか誰かが回す。その彼の、辞めたいほどのしんどさはどこへ行ったのかと思うほど、どうにかなんとかする。残りのメンバーで仕事を分けあって苦しんでいる忙しさは、なんだか罰のようにも感じるが、妙な前向きさもある。葬式の忙しさで故人の死に向き合わなくて済むような感じに近い。不思議な時間が続いている。


わたしは何事も自分でやってみないとわからない性格だけど、こんなことも体験できて、こんな気持ちも味わえるとは思ってもみなかった。勤めているといろいろなことがある。

 


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