龍のこと

麺、好きですか。わたしは大好きです。ラーメンも大好き、蕎麦も好き。スパゲッティも大好きです。いつも大抵ちゅるちゅるしたいです。
でもうどんってそんなに興味がなくて。「はなまるうどん」が東京に現れるまで、うどんを外食で食べることはなかったように思います。でもそれ以降も、別に嫌いでもないけれど、そばかうどんで選べるときは大抵そばを選んでしまう。そばの方が健康的かしら、なんて、白い小麦粉より黒いそば粉に栄養が、なんて、マクドナルドのふあふあフィレオフィッシュが好きなくせに、偽善者のように選んでしまっていました。

さて、名古屋はうどんの国です。
というか、名古屋以西の日本はうどんの国なのでしょうか。九州はラーメンの国かなと思いますがさすがに雑でしょうか。

名古屋名物のきしめんもうどんの一種(だと思ってるんですが大丈夫でしょうか)。 私にとってきしめんといえば実家の近くの蕎麦屋から出前で取るもので、それは風邪を引いているときに食べるもので、鶏肉が入っているのがボーナスのようでした。私の実家は父が鶏肉嫌いなので基本的には鶏肉を家で食べることができなかったのです、全然関係ない話ですが。東京の蕎麦屋のメニューにきしめんがあったのも、いま思えば珍しいことなのではないかという気がします。東京の人、どこできしめん食べましたか? ものの本によると、熱田神宮の中で食べられる「宮きしめん」が、ムードも含めて素敵なんだそうです。うなぎ絶滅の声が聞こえる今日この頃、ひつまぶし食べてる場合じゃないので、今度行ったら食べてみたいと思ってます。
f:id:l11alcilco:20180920223308j:image(これは名古屋駅近くのKITTEに入っている宮きしめんの写真です。)

それと、味噌煮込みうどんも名古屋の名物。まだ、「山本屋本店」でしか食べたことがなくて「山本屋総本家」には行ったことがないくらいの味噌煮ビギナーですが、ぐらぐら煮えている鍋の蓋をとって、蓋を取り皿にせよ、という世界観には驚きと共にときめきました。二人で行っても「取り皿としての蓋」がもう一つ出てきてますます驚いた。これ、蓋じゃないんじゃないの?(蓋です)
f:id:l11alcilco:20180920223654j:image(上下に写り込んでいる円形が2枚の蓋です。なお、山本屋本店はつまみのラインナップが素敵なので飲みに行くのもおすすめできます。)

 

独自のうどんカルチャーに振り回されている中で、もう一つ気になっていたのが「カレーうどんは名古屋名物」という文句。カレーうどんに地域性なんてあるかいな、そもそもカレーだぞインドだろ、や、インド人は絶対カレーうどん食べないだろうけど…とかいろいろ思っていたのですが、今日「うまいカレーうどんは良いものだな」と素直に幸せになってしまったのでそのことを書きます。

 

名古屋の繁華街・錦に、「麺処 龍」という有名うどん店があります。
錦は、東京で言えば歌舞伎町のようなエリアで、狭い道幅に細長い建物が並び、そこここに無料案内所があって(あれは何を案内してくれるのでしょうか)、ビルの側面では大量の夜のお店が看板を光らせています。「ビキニ・ガールズ・バー でらでらガールズ」の看板を見たときは衝撃のあまり、心の中で「名古屋ここに極まれり!!!」と叫びましたが、よく考えると名古屋人もこのネーミングには喜ばなさそうです。でらでら言ってる人、1人も見たことない。ちなみにみゃーみゃー言ってる人も見たことない。観光で遊びに来た人が記念に行くのかな、でらでらガールズ。そんな店の合間合間にスーツのいかついお兄さんたちが立っていて、ちょっと怖い気もするのですが、若くもなく美人でもなく派手でもない私のような人間は彼らにとって一番関心のないタイプの人材なので、逆に堂々としていられるというもの。そのエリアのほんとうに谷間と呼べる、ちょっと奥まったところにある「龍」。もうロケーションだけで絶対美味しいやつじゃん。
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秋雨のしとしとと、あの40℃の日々はなんだったのかと思わせるひんやりした日だったせいもあるのか、店に入った20時頃は満席。一人ですと伝えると「相席しかないけど」と言われて、全く問題ないので案内された席に座ります。先客がスーツにメガネ、Galaxyのスマホでゲームの画面を見ている内向的な印象の男子で、これ全然恋とか芽生えてもいい感じですけど…?と3秒ほど直視してしまいましたが迷惑なのでやめました。
メニューの文字の雑然としたところに改めて手応えを感じ、瓶ビールとつまみを実施してからうどん、の流れもある、と認識しつつ、カレー煮込みうどんを頼みます。なお渡されるメニューにはカレーうどんは掲載されていないので戸惑いますが、壁に貼ってあります。ほかにはお蕎麦やひやむぎなんかもやっているようですが、店内は圧倒的に煮込みうどん。出汁のいい匂い。
麺は注文から20分ほどかかります、と壁に注意書きがされていて、それもいつ書いたのかという黄ばみで、またときめく。気取り皆無で、やすらぐ。テレビが付いていて、隣の席のおじさんたちは3人で誰かの噂話をしながら、ビール後のうどん中。相席の男子はかしわ味噌煮込みうどんを食べていました。つゆが茶色く不透明なので、カレーうどんなのか味噌煮込みうどんなのか見分けが付きにくい。なんだか楽しくなってきましたよ。
名古屋で「龍が如く」の新しいやつをやるならここが舞台だし、キムタク確実に来るな…「龍」に…とほくそ笑んでいたら、わたしのカレー煮込みうどんが来ました。
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めっちゃグツグツしている。


つゆは小麦粉がしっかり入った感じのドロリ具合。和風出汁のいわゆる蕎麦屋のカレー的なやつ。麺は手打ちなんだそうですが、それにしてもと言いたくなる短さ。でもこの短さがおつゆを跳ねさせないとのこと。天才か。小麦粉の鍋の中に泳ぐ小麦粉の麺を探して食べるのが楽しい。たまに鍋底にくっついているのでしゃもじでガリゴリする食い意地。その他の具はちょっとシャキシャキの残った玉ねぎ、アサリとエビ、生卵、かまぼこ、少しだけお揚げ、少しだけ鶏肉、青ねぎ。卵とネギ以外なにも見えないので、とにかく掘って掬って食べます。まあ、もう、うまーい、です。
こんなの、飲んだあとに食べたくなるに決まってます。出汁の味、味の濃すぎぬカレーの味、やや芯の残ったうどんの小麦粉の味。ご飯を追加で頼んで、おつゆをかけたらさぞ美味しいことでしょう今日は自重しましたが。 ここには見どころがないとかカルチャーがないとか名古屋の人は嘆くけど、こんなのカルチャーでしかないだろうよ!と、一人でちょっと怒ってしまうほど魅力的なお店でした。悔しいけど、カレーうどんはもしかしたら名古屋名物なのかもしれません。次は深夜に行きたいです。